記憶力は「引き出す力」で決まる!記憶力アップにつながる「引き出す力」の鍛え方
「憶えなきゃいけないことが山ほどあるのに、全然憶えられない・・・」
「おかしいな・・・。この人の顔は憶えているんだけど、名前が出てこない・・・」
あなたは最近、自分の物覚えが悪いと感じることはありませんか?
もしかすると、その理由を、自分が年をとったからだと考えていませんか?
たしかに、私たちの身体は老化とともに動きにくくなってきます。
ただ、脳の働きの衰えに関しては、老化が原因とはいいきれないんです。
それを示す興味深いニュースが、2014年、アメリカのニュース誌「TIME誌」で取り上げられました。
そのニュースとは、115歳で亡くなったオランダ在住の女性の脳を解剖したところ、脳にアルツハイマー型認知症の兆候がなかった!というもの。
(参考:TIME誌の記事「Long-Life Secrets From The 115-Year-Old Woman」(英文))
115歳になっても脳は元気だったなんて・・・・!
ビックリですよね。
もちろん、脳は身体の一部なので、元気な状態を維持するためには、健康な生活を送ったり、栄養をしっかり摂っておく必要があります。
ただ、“脳の働きは老化とともに衰えない”ということがわかるだけでも、なんだか人生の可能性が広がりますよね。
とはいえ、年をとった人たちは口々にこう言うでしょう。
「それでも最近、物覚えが悪くなった気がする」と。
たしかに私自身、年々物覚えが悪くなってきた気がします。
なぜ、そのように感じるのでしょうか?
その理由は、年をとればとるほど、私たちの記憶の量は膨大になるため、その中から必要な記憶を「思い出す」ことに苦労するようになるからです。
私たちは日々、目から入る情報、耳から入る情報、口で味わう情報、肌で感じる情報などなど・・・ものすごい量の情報を処理し、記憶しています。
そのため、年をとればとるほど、情報量は膨大なものになっていくんです。
そんな膨大な情報の中から、必要な記憶だけを取り出すのは大変です。
たとえるなら、何百万冊もの蔵書がある図書館から、お目当ての本を探さなければいけないイメージです・・・。
でも実は、勉強ができる人たちや、仕事ができる人たちは、その点にうまく対応できているんですね。
なぜなら、彼らは、情報を整理・分類しながら記憶し、思い出す際にそれらの情報をうまく検索する力に優れているからです。
その力とはすなわち、「引き出す力」です!
その「引き出す力」は、以下のふたつの要素で構成されます。
「引き出す力」を構成する2つの要素
- 何かの知識を憶える際、それがどういうものかを、タグ付けして整理・分類する力
- 何かの知識を思い出す際、最適な検索ワードを用いて、記憶の中から検索できる力
(もしくは最適なタグを使って呼び出せる力)
つまり、記憶力のいい人たちは、Googleのような賢い検索エンジンを頭の中にもっているような感じなんです。
というわけで、こんにちは。
『あたまナビ』のナビゲーター、渡邉(わたなべ)です。
今回のテーマは記憶力!
最近、昔に比べて物覚えが悪くなったかも・・・と思うことが増えてきました。
仕事が忙しくなってくると、上司への報告を忘れてしまったり、日報を書くのを忘れてしまったり・・・(^^;)。
そんな中、ふと思ったんです。
仕事のタスクは忘れることがあるのに、自分が昔に遊んだゲームに出てくる魔法やアイテムの名前は今も憶えているな・・・と。
その理由を調べていく中で知ったのが、「引き出す力」の大切さです!
「引き出す力」は、知識や情報を“何かと関連付けて”憶える力でもあります。
私が昔のゲームのことを今でもよく憶えているのは、無意識の間に、ゲームの情報を何かと関連付けて憶えていたからなんですね。
逆に、仕事のタスクをたまに忘れてしまうのは、そのタスクを何かと関連づけて憶えられていないからなんです。
たとえば、あなたがどこかのBarに行ったとき、「スクリュードライバー」というカクテルを知り、そのカクテルの名前を憶えたいとします。
スクリュードライバーという言葉は、普段なかなか使いませんから、カクテルに詳しくない人がこの言葉を憶えるのはちょっと大変です。
ではどのようにして憶えればいいかというと、スクリュードライバーという言葉と、自分に関する何らかのエピソードをつなげてみるんです。
たとえば、普段からゴルフをたしなんでいる人であれば、「スクリュードライバーって、勢いよくドライバーを振り回すような名前だなあ」と考えてみます。
そうすれば、ゴルフの話題をフックにして「スクリュードライバー」という名前を思い出せるかもしれません。
また、日曜大工が趣味の人は、「スクリュードライバーって、家具のネジをドライバーで勢いよく回すような名前だなあ」と考えてみます。
そうすれば、日曜大工の話題をフックにして「スクリュードライバー」という名前を思い出せるかもしれません。
上記のように何らかのエピソードとセットにして憶える方法を、“エピソード記憶化する”といいます。
実は「引き出す力」を高めるためには、このエピソード記憶を使った方法以外にも、“感情とセットで憶える方法”や、“位置情報とセットで憶える方法”などがあります。
ゲームに出てくる魔法やアイテムの名前を今も憶えているのは、“楽しかった!”という感情とセットで憶えているからなんですね。
それらの方法に関しては、この記事の後半で詳しく取り上げますので、楽しみにしておいてください。
また、記憶力を高めるには、私たちの脳がどのようにして情報を記憶するかの仕組みも知っておいたほうがいいでしょう。
よって、記事の前半では、記憶の仕組みについても取り上げます。
それでは、長い前置きはこれくらいにして、これから本題に入っていきましょう!
「最近、物覚えが悪くなった・・・」という人にこそ、読んでもらえるとうれしいです!
今回の記事で取り扱っているノウハウの一部は、以下の書籍を参考にしています。
脳は「命に関わる情報」を優先的に憶えようとする
まずは、記憶のメカニズムについてお話しします。
私たちの脳がどのようにして情報を記憶するかという仕組みを知っておきましょう。
実は、私たちの脳は、命に関わる情報を優先的に記憶しようとしているってご存じですか?
脳はまず、目や耳から入ってきた情報に関して、「その情報は、自分の生命を脅かす情報かどうか?」と判断します。
そこで脳が「この情報を憶えておかないと、生命の危険に関わる」と判断した場合に、その情報が優先的に記憶されるんです。
たとえば、どこかの道を歩いているときに車にぶつかりそうになったのであれば、脳は「この道で車にぶつかりそうになった」と記憶します。
また、その道で誰かに付きまとわれたときには、「この道で誰かに付きまとわれ、とても怖い思いをした」と記憶します。
つまり私たちの脳は、私たちの生命を守るために、恐怖や痛みに関する出来事を鮮明に憶えるようにできているんです。
だから、極端な話、何かの情報を手っ取り早く憶えたいのなら、何かしらのネガティブなこととセットに憶えるという方法があります。
たとえば、痛い治療を受けた歯医者さんのことなどは、年をとっても忘れませんよね・・・(^^;)
でも、そんなネガティブなことで記憶を埋めてしまっては、今度はストレスが溜まる一方です・・・。
安心してください!
脳が優先的に記憶するのはネガティブなことだけじゃありません。
たとえば、「自分が大好きな人からプレゼントをもらった!」「昨日行った洋食屋さんのハンバーグがすごく美味しかった!」「1ヶ月前に行ったコンサートの最後の曲に感動した!」といった感動体験を脳はしっかり記憶します。
楽しいことやワクワクすることも、私たちの生命にとって大切ですからね。
これらの話をもう一度まとめると、脳は私たちの生命・生活に影響するような刺激的な情報を優先的に憶えるようにできている、ということがいえます。
だから、なんとなくツラかったとか、なんとなく感動したという中途半端な情報は、記憶されにくい傾向にあるんです。
ただ、そういった情報も、記憶されることがあります。
同じ情報を何度も繰り返してキャッチし続けると、脳がその情報を勝手に憶えてしまうんですね。
「毎日触れる情報なら、自分たちの生命に何かしらの影響があるに違いない」と脳が捉えてしまうのかもしれません。
そういった記憶を、「反復による記憶」といいます。
以上のように、記憶するノウハウにはいろいろあるわけですが、脳の記憶力を手っ取り早く上げたいのなら、先ほどお伝えしたように
ことをオススメします。
派手な体験でなくてもいいんです。
たとえば、泣ける映画を観るとか、散歩中に道端に咲いている花を見て生命の尊さを感じるとか、そういったことも感動体験になりますから。
そう考えると、脳は、その情報で私たちの感情が揺れ動いたかどうか?という点を見て、記憶すべきかどうかを決めている、ともいえますね。
記憶には3つの段階がある
名古屋大学の環境医学研究所所長 澤田 誠氏によると、記憶には大きく分けて3つの段階があるとのことです。
1.感覚記憶
五感から入ってきた情報を保管する記憶です。
記憶される時間は数秒ほどです。
2.短期記憶
一時的に覚えたことをすぐに使うための記憶です。
数分から数日間だけ保管されます。
3.長期記憶
反復されたことで強く残った記憶です。
数か月から一生、保管されます。
私たちの脳は、受け取った情報の重要性や反復の程度に応じて、「感覚記憶」→「短期記憶」→「長期記憶」と保管する場所を変えて記憶していきます。
ただ、それらの記憶は、先ほどもお伝えしたように“その情報が私たちの生命・生活に影響するかどうか?”といった判断がベースにあることは憶えておいてください。
では、情報がどのように記憶されていくのかを一例をあげて見ていきましょう。
情報が記憶される流れ
あなたが女性だとして、ひとりで飲み屋に行ったとします。
その飲み屋でカウンターに座ったあなたは、突然、隣に座っていた人に声をかけられました。
この時点で、あなたの「感覚記憶」に「隣に座っている人から声をかけられた」という記憶が残ります。
そして、その数秒後、その人は自己紹介を始めました。
「僕の名前は中井です。最近アメリカから帰ってきたばかりで、日本に友達が少ないので、よかったら一緒に飲んでいただけませんか?」
あなたは一瞬「突然、声をかけてくるなんて怪しい人・・・」と思いましたが、中井さんの外見や声がとても素敵だったのと、誠実そうに見えたので、一緒に飲んでみることにしました。
ここであなたの感情が動きました。
感情が動くということは、あなたの脳が「この情報は生命にとって大切かもしれない」と判断することになります。
よって、脳は、中井さんの名前、顔や会話の内容を「短期記憶」に保存しました。
その後、あなたはこの中井さんとの仲を深め、頻繁に会う仲になりました。
中井さんとの会話はとても楽しく、あなたはどんどん中井さんに惹かれていきました。
中井さんと会っているときは、感情が頻繁に揺れ動きます。
その結果、脳は「この情報は生命にとって大切だから、憶えておくしかない!」と判断するようになり、中井さんとの日々が「長期記憶」に保存されることになりました。
このケースで大事なのは、もし、中井さんと仲良くならなければ、脳は中井さんとのやりとりを「長期記憶」へ移さなかったであろう、という点です。
なぜなら、先ほどもお伝えしたとおり、脳はその情報で私たちの感情が揺れ動いたかどうか?を軸に、情報を記憶するからです。
交流が深くない人の記憶をすぐに忘れてしまうのは、その人とのやりとりでは感情が揺れ動かなかったことが原因です。
そのため、「短期記憶」止まりで、「長期記憶」へ移らないんですね。
実は、私たちの脳が憶えられる情報量には限界があるっていう説もあります。
一説によれば脳が記憶できる情報量は、データにすると約17.5TB(テラバイト)だという説です。
(参考:環境医学研究所のギャラリー内で公開されている「全学理系教養講義 脳 その3」より)
この17.5TBという数字は、DVDにすると約3,700枚、Blu-rayだと700枚のデータ容量です。
フルHDの動画にすると、約114日間撮影ができる容量。
そう聞くと多い量のように感じますが、人の一生分で考えると、かなり少ない情報量です。
なぜなら、冒頭にお伝えしたとおり、私たちは日々、目から入る情報、耳から入る情報、口で味わう情報、肌で感じる情報などなど・・・、ものすごい量の情報を処理しているからです。
だから、普通に生活しているだけでも、脳の記憶容量はどんどん少なくなっていくという・・・。
それを考えると、脳は本当に大事な情報のみを「長期記憶」で保管しようとするのかもしれないですね。
記憶力は3つの力によって構成される
学生時代の友達と偶然再会したけれど、友達の名前をド忘れしてしまった・・・。
歳をとると、そんな気まずい状況が増えてきます。
でも実はこれ、友達の名前を忘れてしまったのではなく、記憶していた名前を「引き出す力」が弱くなってしまっただけなんです。
「引き出す力」に関しては冒頭でお話ししましたね。
実は記憶力には「引き出す力」を含めて、以下のような3つの力があるといわれています。
- 憶える力
- 忘れない力
- 引き出す力
私たちの「憶える力」や「忘れない力」は、歳をとってもそれほど急には衰えません。
なぜなら、私たちの脳は肉体的に健康であるかぎり、老化によって衰えることはないからです。
ただ、「引き出す力」に関しては、衰えやすくなります。
なぜなら、歳をとればとるほど、たくさんの情報を憶えることになり、それらの情報を整理することが難しくなってくるからです。
整理ができていないと、脳のどの場所にどんな記憶をしまったのかがわからなくなり、どれだけたくさんの情報を憶えていたとしても、その情報を引き出せなくなります。
繰り返しいいますが、たとえるなら、何百万冊もの蔵書がある図書館から、お目当ての本を探さなければいけないイメージなんです・・・。
「じゃあやっぱり歳には勝てないんだ・・・」と思われませんでしたか?
安心してください。
冒頭で伝えたように、「引き出す力」の正体は、知識や情報を“何かと関連付けて”憶える力。
つまり、その関連付ける力を鍛えればいいんです!
「引き出す力」を劇的に高める7つの方法
さてここからはいよいよ、「引き出す力」を高めるためのノウハウについてお教えします。
何度も言うとおり、「引き出す力」の正体は、知識や情報を“何かと関連付けて”憶える力。
その力は以下の7つの方法で高めることができるんです!
「引き出す力」を劇的に高める7つの方法
- 感情とセットで憶える
- 関連するほかの情報とセットで憶える
- エピソード記憶化して憶える
- 「場所」とセットで憶える
- 反復して憶える
- タグ付けする感覚で、カテゴリ分けして憶える
- 過去の記憶を定期的に思い出すようにする
1.感情とセットで憶える
繰り返しお伝えしているとおり、脳は“感情に訴えかける情報”を優先的に記憶します。
その仕組みを知っていれば、何かを記憶する際に、 ということがわかります。
たとえば、初対面の人の名前と顔を憶えたいのなら、「この人はすごく優しそうだな」「この人と一緒にいると楽しそうだな」などと、自分の中に生まれた感情をしっかり記憶しておきます。
もし、感情を生み出すのが難しそうなら、相手と関わった際の未来のことを勝手に妄想してみてもいいかもしれません。
「この人は料理が上手そうだなあ。自宅にたくさん調理器具をもっていて、こだわりのイタリアンなどを作ってくれそうだな~。もし、ホームパーティーに呼んでもらえたら、絶対に駆けつけちゃうなあ」などというふうにです。
2.関連するほかの情報とセットで憶える
何かの言葉を憶えたいときは、その言葉に関連する情報もセットにして憶えるといいでしょう。
たとえば、「スクリュードライバー」というカクテルの名前を憶えたいのなら、なぜあのカクテルはスクリュードライバーと呼ばれるようになったのか?という理由や背景なども知るようにします。
そうすれば、言葉を引き出す際の手がかりが記憶にたくさんインプットされるんです。
ちなみに、「スクリュードライバー」という言葉の由来は次のようなものです。
その昔、イランで働いていたアメリカ人作業員が、のどの渇きを癒すために即席のカクテルを作りました。
この作業員が、そのときカクテルをかき混ぜるために使用したアイテムが、工具のスクリュー・ドライバー(ねじ回し)だったことから、その名前が付きました。
3.エピソード記憶化して憶える
エピソード記憶とは、自分が直接見たり聞いたりした、経験にもとづく記憶のことをいいます。
ここでいうエピソードという言葉は「ストーリー」という言葉に置き換えることができます。
映画を思い出してみてください。
映画のストーリーの中には登場人物のさまざまな感情が出てきますよね。
そう、ストーリーの中にはたくさんの感情が詰まっていることが多いため、記憶に残りやすく、思い出しやすいんです。
よって、まずは何を憶えるにしても、自分を軸としたエピソード(ストーリー)を考えてみてください。
自分がその情報に触れたことで、どんな経験をし、どんな感情が乗っかったのか?を考えながら記憶するとよいでしょう。
4.「場所」とセットで憶える
私たちの脳の中には「海馬」という部分があります。
この海馬は記憶を整理する役割を担っているのですが、実は、記憶を整理する際に、あらゆる記憶に「位置情報」を付けているんです。
なぜ位置情報が付けられているのでしょうか?
その理由は、私たちの行動には必ず「どこで、その行動をとったか?」という位置情報が紐づいているからです。
位置情報はシンプルな情報なので、思い出す際のわかりやすい手がかりとして重宝されるんです。
ちなみに、位置情報は行動だけでなく、感情にも紐つきます。
たとえば、「この場所を通りかかったときに怖い思いをした」という体験があれば、脳は今後そういう怖い体験を繰り返さないために、その体験を位置情報とセットにして記憶します。
その怖い体験がどの場所で起きたかの位置情報を記憶しておくことで、同じ場所や似ている場所を通ったときに注意のシグナルを発するんですね。
この脳の仕組みを積極的に用いるのであれば、
たとえば、まわりにどんな建物があったか?どんな雰囲気の場所だったか?といった情報も位置情報につながります。