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現在人の脳疲労を軽減 森林浴が脳に良いワケ

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脳の疲労は森林浴で軽減できる。科学的に立証された森林浴には脳に良い要素が沢山あります。

こんにちは!
秋は気候が良く、スポーツの秋、行楽の秋、芸術の秋などといわれますね。前今回は「行楽の秋」をテーマに、脳と秋の行楽にふさわしい「森林浴」との関係を紹介します。

「森林浴」とは今ではおなじみの言葉ですが、実は1980年代に日本の林野庁の長官が呼びかけた言葉で、現在では「Shinrin-yoku」 として世界でストレス解消のキーワードになっているそうです。

では、なぜ森林浴を行うとリフレッシュした気分になるのでしょう?
その秘密に迫ります!

脳に癒しを与える要素

脳はわたしたちの体の活動を司る大事な部分。脳は、目から手や耳から感じる外からの情報をもとに考えたり、次の行動の指示を出したりといつも大忙しです。そんな脳にも「考える」前に反応できる情報があります。

それは「におい」です。

脳には感情や理性を司る「大脳辺縁系」と理性的な思考を司る「大脳新皮質」の2つがあります。においの情報は脳の「考える」部分を介さず大脳辺縁系に直接伝わります。そのため、においの種類によって、意図せずに思い出がよみがえったり、リラックスや癒しを感じたりすることがあります。

鼻から脳に癒しを届ける 森の香りフィトンチッドとは?

森の香りはフィトンチッド。ヒノキやスギに含まれる揮発性の香り。殺菌消臭の効果があります。森の中に入ると独特の香りがしませんか?それは「フィトンチッド」とよばれる樹木から発生する揮発性の香りです。「フィトンチッド」とは植物(phyton)がもつ殺菌(cide)という意味で、ロシアの科学者がつくった造語です。植物は自由に動けない代わりに、天敵を寄せ付けないように特殊な香りを放ち、自分の身を守ります。日本では身近な木材のヒノキやスギにも独特の良い香りがありますよね。これがフィトンチッドです。香りの成分としてα-ピネン、リモネン、サビネンなどがあります。
本来、森は葉っぱや動物の排泄物など堆積物があり、臭気が溜まりやすいのですが、私たちが森林で臭気を感じないのは、フィトンチッドのおかげといわれています。フィトンチッドには殺菌、抗菌、消臭の効果があるからです。室内でヒノキの香り、スギの香りを嗅ぐことで前頭前野(脳の司令塔)が鎮静化することが報告されています。

現代人は様々な情報を脳で処理し、お疲れ気味です。森林浴に行けない方でも天然成分100%のヒノキやスギの精油をつかってフィトンチッドを実感してみてはどうでしょうか。

耳から脳に癒しを届ける 音の脳への伝わり方は?

人間の耳は脳の「側頭葉」という部位で音を感知し脳で理解しています。音は耳の中にある人体最小の骨である耳小骨(じしょうこつ)に届き、蝸牛管にある膜の表面にある細胞が揺れ、電気信号として脳にある聴覚野、脳幹、小脳へ信号が送られることで、耳から脳に伝わります。
実は音については、脳と体に良い影響をもたらすものと悪い影響なものとが世界各地で報告されています。

飛行機の轟音に耳をふさぐ子ども。騒音は大人だけでなく、子供の健康、学力にまで影響します。

脳に悪い影響をもたらす音とは?

まず、脳にあまり良くない影響を与える音としては、機械音や飛行機の轟音、携帯の電子音などの騒音です。
人類の歴史の99.9%は、狩猟農耕を行い自然の中で暮らしていました。人間の体、感覚は自然の中で進化していったことは明らかです。しかし現代の私たちは、近代産業の発展によって機械音、電子音など、かつての生活では感じなかった音の中で生きています。こういった騒音は交感神経を刺激して、血管の収縮脈拍の増加、血圧の上昇増加をおこし、長期間続いた場合は私たちの健康を害することがあるようです。ドイツで行われた調査で、は離発着の多い空港周辺で、100万人以上を対象にしたところ、騒音レベルが46db(デシベル)以上の居住区と、そうでない居住区の人々の健康状態を比べた調査では、女性の高血圧の薬の服用率が約2倍であったというデータがでています。

また騒音の影響は大人だけではなく、子どもにもあるようです。ミュンヘン空港が開港する前後の二年間で空港周辺に住む子どもたちと空港周辺に住んでいない子どもたちを比較した調査では、空港周辺に住む子どもではストレスホルモンが約2倍に上がり、血圧の上昇も報告されています。イギリスの健康雑誌「ランセット」で発表された論文では、イギリス、オランダ、スペインの主要空港周辺の小学校に通う数千人の子どもを対象にした大規模な調査においては、空港周辺に住む子ども(小学生)の学力の遅れが報告されています[1]。

 2.脳に良い影響をもたらす音は?

森の中を歩く。体で感じる超高周波はハイパーソニック効果があり、リラックス効果があります。脳に良い影響をもたらす音とはどんなものでしょうか?
その代表的なものとして、「森の中で感じる音」があげられます。人間の聴力で聞こえる範囲は約2万Hz(ヘルツ)ですが、森林には人間の聴力では判別できない高周波(4万Hz以上)の音が存在していて、この複雑な高周波を体が感じることで、「基幹脳(脳幹・視床・視床下部)」が刺激され自律神経、免疫系、内分泌、心地よさや感動を司る報酬系の神経ネットワークを活性化することが報告出されます[2]。この現象は「ハイパーソニックサウンド効果」とよばれ、ジャワ島の熱帯雨林など自然が豊かな環境で多く見られます。「ハイパーソニックサウンド」は都市部の生環境音には含まれません。また一般のCDプレイヤーやTVでは2万Hz以上の音は再生できないので、自宅で森林浴の音を感じるはむずかしいのです。森林浴は現地に出かけることで効果を発揮するのですね。

3.目から得られる癒し効果「フラクタル構造」って何でしょう?

 都会にはカラフルでユニークな字体の看板や、様々な形の大小のビル群など色や形が様々なものがあり、複雑な視覚情報が多いですね。視覚情報を処理するプロセスでは、目の網膜で電気信号に変換された視覚の情報が、視神経から脳の視覚情報処理を担当する後頭葉にある「視覚野」に到達します。この情報は脳の司令塔である「前頭葉」に伝わり、判断や行動の指示を行います。このように目からの情報は脳で処理するプロセスのため多すぎる視覚情報は脳が疲れる原因であるともいえます。

一方で、自然の森の中は木立、様々な枝に茂る葉などがあります。こういったものは、不規則に生えているように見えますが、実は規則性が多く、視覚からの情報が脳でスムーズに処理される仕組みがあります。その規則性は「フラクタル構造」とよばれます。フラクタルとは一部の形(小さいパターン)が全体の形と相似しているパターンやモノを指します(自己相似)。自然の中にあるものでいえば、シダの写真のように、枝を構成する小さな葉が全体の葉の形と相似しているパターンを指します。
シダの葉。フラクタル構造は脳でスムーズに処理され、癒しの効果があります。

実験によるとフラクタル構造が含まれた画像を1分間見つめると、脳の司令塔である前頭葉から、リラックスしている状態を示すアルファ波が出ること明らかになりました。[3]

なぜ「フラクタル構造」が人間の脳をリラックスさせるのか、その理由はとして考えられているのが、フラクタル構造を見るときは脳での視覚の処理がスムーズになり、脳のストレスが軽減されるようです。

これは自然の中で進化してきた人類の視覚は自然が持つ多数のフラクタル構造を見ながら発達してきたことが背景にあるようです。

フラクタル構造の要素が含まれるものには、波、銀河、雲、雪の結晶といった自然があり、私たちの脳をリラックスへと導いてくれます。パソコンのスクリーンセイバーで表示される画像にはフラクタル構造が多く、実は普段から身近で見ているパターンです。目が少し疲れたと思う時には、フラクタルパターンを眺めてはいかがでしょうか。そして時間をみつけて森林浴にいってみると脳が癒しを感じるかもしれません。

まとめ

森林浴には鼻、目、耳のそれぞれから脳を休めるポイントがあるようです。森林浴という日本発信の言葉であり、その効果は科学で立証され、世界中にセラピーとして広まっています。日本人として喜ばしい事ですね。しかし現在の日本に住む私たちは充分、自然と触れ合っているとは言い難いかもしれません

清々しい空気と心地よい音を感じて「脳」をリラックスさせるためにも、近所の公園ではなく、森林浴はおすすめです。今年の行楽にいかがでしょうか。

参考:「Nature Fix 自然が最高の脳をつくる 最新科学で分かった創造性と幸福感の高め方」 (フローレンス・ウィリアムズ著 2017、NHK出版)

[1]THE LUNCET Aircraft and road traffic noise and children’s cognition and health
[2]芸能山城組 ハイパーソニックエフェクトとは何か?https://www.yamashirogumi.jp/research/hypersonic/

[3]Feel-good fractals: from ocean waves to Jackson Pollock’s art

 

 

 

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