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  • マルチタスク=仕事ができる?脳におけるマルチタスクのデメリット

多忙な社会に住んでいる私たちは仕事に関しても、日常生活に関しても「マルチタスクを行わなければいけない」という無言のプレッシャーを感じることがあるのではないでしょうか?
一つのことに集中して作業を行うシングルタスクが得意な人からすると、いくつもの作業を同時に行うことで、しんどさや、時には「自分は仕事ができない」と感じることがあるようです。
シングルタスク、マルチタスクは元々コンピュータ用語だと言われており、コンピュータが一つの処理を行うか同時進行で別々の処理を実行するかを指す用語です。これが仕事や生活に置き換えられ、近年使われるようになりました。

では、マルチタスクを行うことが私たちにとってよいのか考えていきましょう。

シングルタスク、マルチタスクとは?

シングルタスクは、一人の人が一つの仕事や作業を担当することをいいます。商品開発やデザインを必要な時間をかけて担当することが当てはまるでしょう。一つの作業を終えてから次の作業に取り掛かるといったスタイルになるので、現在持っている仕事に集中して取り組むことができるメリットがあります。
データ入力や製品企画の検査など、集中力が求められる細かな作業もシングルタスク向きです。

マルチタスクは、一人の人が複数の仕事や作業を担当することをいいます。たとえば、営業、他社研究、商品の品質管理、サイト運営……などを一人で行います。それぞれの案件を同時進行で行うため綿密な計画を立てて仕事を進めていくことが必要となります。

マルチタスク神話

「同じ時間でたくさんのことができるのだから、マルチタスクができるほうが絶対にいい!」と思うでしょうか。今の現代社会がマルチタスクを行うべきという考えが根底にあるため、一人の人に複数の仕事を任せようとする傾向があるようです。

しかしそれこそ「マルチタスク神話」と考えられています。

2つのことを同時に行うことは可能でしょうか。

集中力が途切れずに幾つかの活動を同時にこなせる場合もあります。例えば,音楽を聴きながら部屋を掃除することがあるかもしれません。そのとき音楽はBGMのようなものなので掃除に集中し、部屋をきれいにすることができます。

でも,集中力が求められる2つのことを同時にこなそうとすると,どちらもうまくいかないことがほとんどのようです。

例えば掃除のときに字幕の映画を見るならどうでしょうか。

映画の内容を理解するためには画面を見なければ行けませんし、掃除に集中しようとすれば映画の内容が分からなくなってしまいます。

 

テクノロジーの専門家シェリー・タークルは次のように書いています。「マルチタスクができていると思えても、……新しいタスクを追加するたびにパフォーマンスは落ちている。マルチタスクをすると神経系が活性化するので、実際には効率がどんどん下がっているのに、効率が上がっていると考えてしまう」

 

注意欠陥・多動性障害の治療を専門としている、マサチューセッツ大学の精神科医Edward Hallowell医師は著書「CrazyBusy」内で、マルチタスクを「人々が、2つ以上のタスクを同時にこなせる、と信じている幻想」と呼んでいます。

同医師が2005年に執筆した記事では「ビジネス業界に蔓延している注意不足特性」と名付けており、「注意不足特性」は忙しすぎる現代への純粋な体の反応であり、「注意不足障害」の症状と似ているとのことで、「いかなる歴史を振り返ってみても、これほどまでに脳に負担がかかっていた時代はありません」とマルチタスクに対してかなり否定的な姿勢を見せています。

マルチタスクのデメリット

●脳へのダメージ

人間の脳はそもそもマルチタスクできるように出来ていません。
マルチタスクが習慣化されると、ストレスホルモンであるコルチゾールが増加すると言われています。コルチゾールは、脳の記憶を司る部分にダメージを与えるため、知機能の低下」や、「注意力の欠如」を引き起こします。

脳へのダメージが蓄積されると、IQが10〜15ポイント下がるうつ病認知症の発症リスクが増大するとも考えられています。

マルチタスクによって脳が疲れると、前頭前野の機能が低下し、物忘れによるミスが起こりやすくなったり、判断力や集中力が落ちたり、自律神経のバランスが乱れて、心身の不調が表れやすくなったりします。

また、マルチタスクは短期記憶への情報流入を妨げるともいわれています。

●生産性の低下

マイクロソフトの研究機関であるマイクロリサーチによるデータでは、マルチタスクはシングルタスクと比較し、生産性が40%低下すると言われています。
生産性の低下だけではなく、作業ミスが50%増加するというマルチタスクをするメリットが全くないということが分かりました。

米国スタンフォード大学のクリフォード・ナスも同時に複数の作業をする人はしばしば強いストレスにさらされ,当座の作業と無関係な事柄によってすぐに気を散らされ,深く考えることをせず,そのため肝心なところを外してしまうと、人間と双方向メディアとのコミュニケーションに関する研究を通して結論付けています。

 

さらに、ミシガン州立大学のアルトマンらの研究では「300人の学生に、パソコンで集中力が必要な作業をさせ、その途中でさまざまな秒数の広告のポップアップ画面を出して作業を中断させる」という実験を行い、どの程度の時間で学生の集中力が途切れるかを調べました。

その結果、ポップアップによって作業が2.8秒中断されると、ミスの発生率が2倍になり、4.4秒中断されると、ミスの発生率が4倍になることがわかったのです。

まとめ

「マルチタスクができない」と落ち込んでしまうことがあるかもしれませんが、マルチリスクのデメリットを考えると、落ち込む必要はないのかもしれません。
マルチタスクはさまざまな形で私たちから集中力を奪い、心身の不調をもたらし、パフォーマンスを低下させてしまうのです。

だからと言って、「自分はシングルタスクなので、一つのことしかしない」という考えではなく、タスクを細かく分類して管理し、時間や日にちを区切って計画を立てていき、複数の業務を行っていくといいかもしれません。
同時に行うのではなく集中して一つずつ片付けていくという方法です。
自分なりにどのような働き方が効率よく動けるのかを考えながら、毎日のタスクをこなしていきましょう。

《参考文献》
マルチタスクは脳細胞を死滅させている?!「マルチタスク=優秀」は幻想
マルチタスクが与える恐ろしい影響。人間の脳が同時に推進できるタスクはいくつまで?

 

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