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子どもや乳幼児が賢く育つための大切な栄養素、DHAの効果とは?

和田 憲児 (わだ けんじ)
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こんにちは!
『あたまナビ』ナビゲーターの和田です。

突然ですが、みなさんは「脳に良い成分」と言われて何が思い浮かびますか?
イチョウ葉エキスやビタミン、タンパク質、ロスマリン酸など脳に良いと言われる成分はたくさん存在しますが、代表格としてDHAが存在するかと思います。
(ロスマリン酸については、「今話題の脳の健康に役立つ成分「ロスマリン酸」とは?」で詳しくご紹介しています。)

DHAと言えば、「頭が良くなる」「集中力が上がる」と言った効果が有名ですが、実は発達中の子どもや乳幼児に対して効果を発揮する成分であることをご存知でしたか?

今回はそんなDHAについてご説明していきたいと思います。

DHAはどんな成分なのか?

DHA(ドコサヘキサエン酸)は人間の体内ではほとんど作ることができない必須脂肪酸の一種で、イワシやサバなど青魚など脂の乗った魚に豊富に含まれています。

DHAは脳や目に含まれる主要な構造的および機能的脂肪であり、発達中の脳や目の重要な構成要素です。

脳のニューロンという神経細胞の突起の先端で神経細胞を活性化して情報の伝達をスムーズにし、学習能力や記憶力を高めてくれる栄養素であることが話題になりました。また1989年には、北ロンドン大学・脳栄養化学研究所所長(当時)のマイケル・クロフォード博士が著書の中で「日本の子どもの知能指数が高いのは、魚をよく食べるためではないか」と述べられたことから、日本でも注目されている栄養素の一つです。

なぜDHAが脳に良いのか

そもそもなぜ魚の脂が良いのかというと、それは魚の生態に関係があります。
ウシやブタなどの陸上動物の脂は常温では白く固まってしまう性質があります。しかし、魚の脂は冷たい海の中でも生きることができるように、低温でも固まらないようにできているのです。魚の油脂は不飽和脂肪酸のため、なんと-40℃でも液体のままというほどの柔軟性があります!さらに、DHAのもつ驚異の柔軟性が細胞膜を柔らかくし、様々な効果を生み出すのです。

DHAの効果

DHAの具体的な効果を紹介します。

DHA(ドコサヘキサエン酸)の健康効果

◎記憶力、判断力を向上する効果
◎視力を回復する効果
◎アレルギーを予防する効果
◎精神を安定させる効果

これらは脳など神経に作用する効果です。生まれてから成人(20歳)するまでの過程で、身長や臓器が大きく成長していきますが、その成長具合を示したスキャモンの発育曲線を見ると神経型の成長は9〜12歳ごろで100%に達します。このことから、DHAは発達中の乳幼児や子どもこそ摂取すべき栄養素であると言えます。

それでは具体的なDHAの健康効果を見ていきましょう。

記憶力、判断力を向上する効果

DHAは脳を構成する約140億個の脳細胞の膜に存在し、脳内でも特に記憶や学習に関わる海馬に多く集まっています。DHAは脳を活性化する働きがあるため、海馬のDHA量が頭の良さに関わっているといわれており、「脳の栄養素」とも呼ばれています。

脳には、有害なものが外部から入らないようにする血液脳関門(※)と呼ばれているフィルターのようなものがあり、脳内に入れる成分と入れない成分を選別しています。
※血液脳関門とは、血液中の有害な物質が自由に脳まで到達しないように働いている機構のことです。

DHAは血液脳関門を通過することができる成分で、神経伝達物質の量を増やし、情報伝達の能力を向上させる働きがあります。

また、DHAは神経細胞の発育を活性化させ、機能維持における重要な役割を果たしています。未熟児で生まれた赤ちゃんを、DHAを含まない粉ミルクで育てた場合と、DHAを含む母乳で育てた場合では、母乳で育ったほうが、知能指数がはるかに高いということが明らかになっております。

そのため、子どもの脳の発育には、赤ちゃんがお腹にいるときから、母親がDHAを摂るようにすること、粉ミルクの場合でもDHA配合の製品を選ぶことが大切です。

また、成長後の子どもでもDHAを摂取させると、学習能力が向上し、集中力が高まることもわかっています。このことからDHAは生まれた時から大切な栄養素であるといえます。

視力を回復する効果

DHAは目の網膜に含まれる脂肪酸の約40%を占めることがわかっており目にもとても大切な栄養素です。

脳の働きが鈍くなることで視力が低下することも明らかとなっています。DHAを摂取すると、近視の改善や集中力の向上、動体視力の改善などに効果があります。DHAを含んだパンを小学生に食べさせたところ、視力が改善されたという結果も報告されています。

また、未熟児がDHAを摂取すると、未熟児網膜症のリスクを低減できることも明らかになりました。DHAは活動的に生きるために必要な視力のサポートや回復に欠かせない栄養素です。

アレルギーを予防する効果

DHAには、シクロオキシゲナーゼというアレルギーを悪化させる酵素を阻害する働きがあります。シクロオキシゲナーゼはプロスタグランジンE2という、アトピー性皮膚炎や花粉症、喘息といったアレルギー症状や関節炎などを促進する物質です。

DHAはこれらのアレルギー源であるシクロオキシゲナーゼを阻害し、プロスタグランジンE2がつくられるのを抑制します。

したがって、アトピー性皮膚炎や花粉症、喘息といったアレルギー症状、関節炎などを緩和する効果も報告されています。

精神を安定させる効果

子どもを対象にした最近の研究により、DHAを摂取することで攻撃性がなくなり、精神面の安定が維持できると報告されています。そのため、ストレスの緩和にも効果が期待されています。

以上のことから、DHAは脳が作られる段階の子どもや神経の発達段階の子どもや乳幼児が摂取すべき重要な栄養素であることがお分かりいただけたかと思います。

まとめ

いかがでしたか?

DHAは脳そのものを作る成分として、とても重要な栄養素です!
特に成長過程にあるお子様に効果のある栄養素なのでDHAをしっかり摂取して、日々の生活から脳の健康をつくっていきましょう!

一方、学習や記憶、物事への意欲、集中力の低下などの老化現象にはロスマリン酸の予防効果が期待されています。
ロスマリン酸について詳しくは、「今話題の脳の健康に役立つ成分「ロスマリン酸」とは?」をご覧ください。

今回は『あたまナビ』ナビゲーターの和田がお届けしました。

参考記事
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22371413
    平均年齢69歳の女性854名の赤血球中のDHA量と脳の加齢障害との関係を調べたところ、赤血球中のDHAの量が少ないと、脳の萎縮及び血管障害が多いことがわかりました。
    そのため、赤血球中のDHAの量と脳の加齢との関係が示唆されています。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22212377
    48名のHIV感染者において、12ヵ月間DHA460mg 及びEPA380mgを摂取させると、血中トリグリセリド量が減少したことから、DHAと EPAを摂取することで、トリグリセリド血症を予防する効果がある。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22113870
    冠動脈心臓病を患っていない患者で、海藻由来のDHAを1日1.68g 摂取すると、血中トリグリセリドが減少し、一方善玉(HDL)コレステロールと悪玉(LDL)コレステロールがともに上昇したということが報告されました。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22101886
    平均年齢10歳の肥満小児120名にDHA 300mg、EPA 42mg を3週間摂取させたところ、血中総コレステロール量が減少し、合わせて体重が減少したことから、DHAが肥満小児に対する予防効果が確認されました。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22057027
    脳の認知機能にはグルタミン酸、及びグルタミン酸を神経細胞に輸送するグルタミン酸輸送体が重要な役割を果たしています。apoE4というタンパク質はこれらを傷害し、認知機能低下をもたらします。DHAを摂取すると、apoE4の働きを抑制することで、DHAには認知機能や痴ほう症予防の効果が期待されています。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21929635
    生後6ヵ月~24ヵ月の小児では必須脂肪酸の摂取は不可欠で、特にDHAが不足すると網膜機能や認知機能に影響を及ぼします。特にDHAや、DHAに変換されるα-リノレン酸は母乳が一番の摂取源であるため、粉ミルクなどで育てる場合、発育障害の問題が指摘されています。そこで、粉ミルクなど人工食などには、α-リノレン酸を添加する強化栄養食品が販売されています。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21954853
    白血球細胞では炎症関連物質のNF-κB が活性化されることで炎症が生じるが、DHA及びプロシアニジンを摂取すると、NF-κB の活性化を抑制し、抗炎症作用を持つことが示唆されています。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21903025
    291名の躁病およびうつ病患者において、ω-3を摂取させると、うつ病を抑制する効果が確認されました。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11254754
    ラットにおける、脳・網膜・肝臓のDHA量(体重当たり)を調べたところ、網膜(4.58mg/g)、脳(2.95mg/g)、肝臓(2.58mg/g) の順に、DHAが多い器官であることがわかっています。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11153584
    小児気管支喘息患者29人において、EPA を1日84mg 及びDHAを1日36mg を含んでいる魚油を10ヵ月摂取したところ、喘息症状スコアが改善され喘息患者に特有のアセチルコリンへの過剰反応も改善が見られました。さらに、血漿中のEPA の量が増加したことから、DHAとEPAには小児気管支喘息に対して有効であると考えられます。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12103448
    出産後うつ病患者(研究41例、計14532名) において、海藻・DHA・EPAの摂取量と産後うつ病の関連性を調査した結果、母乳中のDHAの量および海藻の摂取量が多いほど、産後うつ病の危険性が低いことがわかりました。この結果より、DHAおよび海藻には産後うつ病の予防に有益であることが示唆されました。
  • http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8613538
    期末テストを控え精神的ストレスを抱えた学生41名、DHAを1日1.5~1.8g を3ヵ月間摂取させたところ、他者に対する攻撃性が抑制されたことから、DHAが精神安定効果を有することが示唆されました。
参考文献

・日本健康食品・サプリメント情報センター 編 健康食品・サプリメント(成分)のすべて 同文書院
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

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和田 憲児 (わだ けんじ)

広島出身、大阪在住、京都勤務。趣味の音楽から派生して、人の”無意識”に働きかける物事に興味。『あたまナビ』ナビゲーターとして、無意識に頭に入ってくるような「分かりやすい」「伝わりやすい」記事をつくります。