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ぼーっとしている間も脳は活発に活動中!?「何もしない時間」が重要な理由

牟田 悠(むた はるか)
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みなさんは1日にどのくらいスマートフォンを触っていますか?

「移動中」、「テレビを見ているとき」、「寝る前」…もしかしたら「トイレのなか」でまで?!なかば無意識のうちにスマホを手に取り、気付けば長時間が経過していたなんていうことも多いのではないでしょうか。『あたまナビ』ではこれまで、脳疲労やスマホ・テレビが脳に与える影響についてご紹介してきました。過去の記事でも触れているように、疲れた脳へさらに情報を詰め込んでいると、さまざまなところでミスを引き起こすようになってしまいます。ときには、何もせずにただひたすらぼーっとすることも大切。

「毎日忙しいのに、そんなのは時間のムダ!」と思われますか?でも、あなたがぼーっとしているとき、脳ではとても重要な活動が行われているということが最近の研究でわかってきているのです。

ぼーっとしているときでも脳は休んでいない

脳は非常に多くのエネルギーを消費する器官です。その大きさは体重の2%程度であるにもかかわらず、体が消費する全エネルギーのおよそ20%を使うといわれています。そういうと「だから頭を使う仕事をするとお腹が空くのか」と思われそうですが、それはちょっと違うかもしれません。実は近年の脳科学研究において、何もしないでただぼーっとしているときの脳は、通常の活動時の約15倍以上のエネルギーを消費していることがわかってきました。つまり、頭を使って何かをするよりも、ぼーっとしているときのほうが脳は活動的ということ。そしてこの活動が、脳にとって重要であると指摘され始めています。

脳は一体何をしているのか

ぼーっとしているときほど脳の活動量が多いということを発見したのは、ワシントン大学のマーカス・E・レイクル教授でした。人がぼーっとしているときには、前頭葉の奥の方にある「内側前頭前野」や脳の中心部にある「帯状回」、脳の後ろの方にある「海馬」など、脳内のさまざまな領域が活動し、互いに同期しているということを発見したのです。レイクル教授はこの仕組みを「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と名付けました。脳内の複数の領域で構成されるネットワークのなかでも、最も大きなもののひとつであるといわれています。

レイクル教授によれば、デフォルト・モード・ネットワークとは自動車のアイドリング中のような状態。信号などで停止しても、いつでも発信できるようにエンジンを切らないでおくのと同じようなことが、脳内で起こっています。これから起こる出来事に備えて、脳がいつでもスムーズに活動できるようにさまざまな領域の活動を統括すること。それが、デフォルト・モード・ネットワークの役割であると考えられています。

認知症研究でも重要なポイントとして着目されている

ぼーっとしている間にも脳が勝手に働いてくれるデフォルト・モード・ネットワーク。アルツハイマー型認知症になると早期からこのネットワークに異常を生じることがわかっており、さらに研究が進めば疾患について理解するための手がかりを得られるかもしれません。

デフォルト・モード・ネットワークの研究で明らかになってきているのは、ぼーっとしている間の脳のはたらきが「見当識」に関わっているということです。見当識とは、時間・場所・人物などから自分のおかれた状況を判断する機能。アルツハイマー型認知症になると、見当識が低下するといわれています。その結果、症状が進行すると自分の年齢や名前すら忘れてしまうことも。ぼーっとしているときには自分のペースで感じたり、考えたりできるので、安心感につながるいい刺激になるのだそうです。

また、見当識が低下すると、時間の経過を把握したり、起きた出来事の順序づけをしたりするのが難しくなってしまうこともあります。そうしたことに対しても、毎朝木漏れ日を浴びながら歩いたり、夕日が沈んでいく様子を見たりするなど、1日のうちの決まったタイミングで時間の経過を知覚しながらぼーっとすることによって、気持ちの安心・安定が図れるのだとか。

認知症は誰もがなる可能性のある疾患なので、若いうちからの予防策としてぼーっとする時間を習慣づけていきたいものですね。

まとめ

忙しい毎日を送っていると「ぼーっとする」なんてもったいないように感じるかもしれませんが、脳は怠けているわけではありません。より効率的に思考・行動できるようにするための大切な時間なので、毎日少しずつでも意識してぼーっとするようにしましょう。仕事・勉強中のつかの間など、これまではスマホを見ていた時間をあてながら、脳に優しい習慣を始めてみてください。

また、デフォルト・モード・ネットワークはアルツハイマー型認知症の解明に大きな可能性を秘めていますが、未だに認知症を完治させる治療法はありません。そのため、早くから予防することが非常に大切です。

詳しくはこちらの記事でご紹介しているので、あわせてチェックしてみてくださいね。
認知症予防には正しい知識とロスマリン酸を!

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フリーライター

牟田 悠(むた はるか)

立命館大学大学院文学部日本文学専修前期課程修了。フリーライターとして、関西圏を中心に活動中。
質のいい記事をよりスピーディーに書き上げられるよう、脳の働きや集中力に関する情報にアンテナを張っています。