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吊り橋効果は有効か? 恋のドキドキの正体とは

渡邊 優美
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吊り橋やお化け屋敷、絶叫マシーンといった恐怖を感じる環境におかれると、人は恋に落ちやすいといわれています。そのような時、脳の中ではどのような作用が起きているのでしょうか。

 

◦交感神経と副交感神経

交感神経とは、心臓をドキドキさせたり、瞳孔を開かせたり、消化器官の働きを弱めたりと、身体を動かすための状態に調整する自律神経です。副交感神経はその逆で、心臓の拍動を落ち着けたり、消化を促進したりと、身体を落ち着かせる状態に調整しています。

交感神経は、日常生活の中では、眠りから覚めるときや、運動をするとき、緊張するときなどによく働いていますが、恐怖を感じた時にも優位に働きます。これは、動物の本能が残っているためです。恐怖、すなわち命の危険を感じたとき、動物は敵から逃げようとします。なるべく速く走って逃げられるようにするために働くのが、交感神経なのです。一方で、副交感神経は身体をリラックスさせる働きがあります。

 

◦恋と自律神経系

恋と自律神経

一般的に、恋をすると人は緊張を感じます。意中の相手のことを考えたり、傍にいるだけで心臓がドキドキして、手足が震えたり、考えがまとまらなくなったりする人もいるでしょう。これは、交感神経が優位になっているためです。

また、人は、好みのものを視界に入れると落ち着きを得ることができます。この時に働いているのは、副交感神経です。胸キュンとは、副交感神経が優位に切り替わったことにより気管が収縮し、心臓の少し上のあたりにキュッと絞められた感覚を得ることなのです。恋をしている人は、このように、交感神経と副交感神経の働きの入れ替わりを感じているのです。

 

◦胸キュンの再現を可能にする吊り橋効果

吊り橋効果

恋をしている状態とよく似た状態にするには、吊り橋などの外的要因で軽い恐怖や興奮を感じ、交感神経を優位にした直後にその恐怖の原因を取り去り、落ち着くことによって副交感神経を優位にするという方法があります。そのような急激な変化については、人はそれまでの人生の中で恋による変化だと学習していますので、吊り橋などの外的要因によって生じた神経系の変化でも、恋心が原因だと錯覚してしまう場合があります。

 

 

◦吊り橋効果の持続

恋愛の持続

実際に恋心によって生じた神経系の働きではなく、別の要因によって生じた変化である場合、その効果は長くは続きません。恋心を抱いている相手によって引き起こされる変化であれば、吊り橋のような環境が周囲になくても、相手がいるだけで感じることができるため、長期的に恋愛感情を抱き続けることができます。例えば、デートでテーマパークやスポーツ鑑賞などといった、空間自体が楽しく興奮できるような場所を選択し、その日は楽しく過ごせたとしても、別の場所で会った時は大して楽しいと思えない、というようなことが吊り橋効果にも言えるのです。

吊り橋効果はあくまでも脳内で錯角を起こすきっかけに過ぎないのですから、日々、意中の相手を引き付けておきたいのであれば、相応の努力が必要となるでしょう。

 

◦良い恋は安眠を得られる?

安眠している猫

吊り橋効果ほど激しい変化ではなくとも、交感神経と副交感神経のどちらが優位になるかを知り、調整することによって、日々の生活を快適にすることができます。

例えば、眠る時には副交感神経が優位になっている必要があります。熱いお風呂に浸かって交感神経を優位にすると、徐々に室温に慣れて体温が下がっていくにつれて副交感神経が優位に切り替わっていくため、安眠を促すことができます。

また、眠る少し前に意中の相手のことを考えて、ドキドキしてから、ほっとするものを考えたり、ホットミルクを飲んで副交感神経優位に切り替えることで、同じような効果が得られるはずです。布団に入ってからもドキドキしてしまうことを考えていると、いつまで経っても寝られないのは交感神経が優位であり続けてしまうためです。

 

参考

やさしい生理学 南江堂  編 彼末一之/能勢博

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