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  • 【昼寝の効果】脳のパフォーマンスを劇的に改善する最高の昼寝

 

「シエスタ」って知ってますか?
一昔前に話題になったことがあるので、知っている方も多いかもしれませんね。
「シエスタ」とは、「昼食後に数分から数時間横になって休む習慣」のこと。
日本ではあまり定着していない習慣なのかもしれませんが、スペインでは約44%、スイスでは約42%、フィンランドでは約50%の人が昼寝をするという報告があります。
じつは、この昼寝、最近では脳への健康効果が注目されはじめています。
ということで、今回は、昼寝が脳にもたらす効能について取りあげたいと思います。

多くの哺乳動物がとる睡眠様式「多相睡眠」

意外かもしれませんが、現代人は他の哺乳動物とは違った、非常に特殊な睡眠様式をとっています。
動物の睡眠パターンは大きく以下の2つ。
Ⅰ単相睡眠
Ⅱ多相睡眠

「単相睡眠」とは、1日に1回だけまとめて長く眠る睡眠パターンのこと。
言うまでもなく、現代人のほとんどはこの睡眠様式をとっています。

それに対して、人類以外のほとんどの哺乳動物がとる睡眠パターンが「多相睡眠」。
1日に複数回分けてとる睡眠パターンです。
①夜6時間の睡眠+15分の昼寝
②夜3時間の睡眠+20分の昼寝×3回
③夜3時間の睡眠×2回
などなど、いろいろなパターンが考えられますね。
じつは今この多相睡眠が脳によいのではないかと注目されてきているのです。

というのも、諸説ありますが、人類ももともと多相睡眠だったのではないかと考えられているからです。
電気が普及する以前は、多くの社会で、夜寝始めの「第1睡眠」、夜中に目が覚めて朝まで寝る「第2睡眠」の2回の睡眠を取っていたそう。
ヒト祖先の生態環境に近いと言われる狩猟採集民・ハッザ族を調べた研究でも、昼寝が平均して約54%の日で行われていたことが分かりました。
※参考:ハッザ睡眠生物学:狩猟採集民における柔軟な睡眠覚醒パターンの証拠 – サムソン – 2017 – 物理人類学のアメリカジャーナル – ワイリーオンラインライブラリ (wiley.com)

睡眠は分割するのが生物として「正常」だったのです。
あの昼にくる眠気は、睡眠を分割していた時代の名残りだったのかもしれませんね。
電気を普及させたがために、人々は無理に眠気を抑えて昼寝をしなくなってしまいました。

昼寝が脳のパフォーマンスを上げる


実際に、昼寝したほうが脳によいかもしれないというデータはいくつか出ています。
たとえば、短時間(5~90分)の昼寝をとることで以下のような効能が期待できると報告されています。
①認知機能の改善。
②学習能力の向上。
③感情調節能力の向上。

脳以外にも、身体能力の向上や心血管疾患リスクの低下、糖尿病リスクの低下などに役立つ可能性が示唆されています。

太古の昔は人類の周りには人類よりもはるかに足が速く力の強い猛獣が沢山いたと考えられます。
そんな環境ではすばやく短い睡眠をとって、頭のはたらきや身体の動きをよくする必要があったのでしょう。

昼寝の注意点

ただし、昼寝をするときは、ひとつ注意すべきことがあります。
昼寝時間が30分を超えると、徐波睡眠という深い眠りに入りはじめ、睡眠慣性(起きた後に眠気や気だるさが強く残る現象)が生じます。
その結果、起きるのが非常につらくなり、一時的に脳のパフォーマンスが落ちてしまうこともあるそう。
それに加えて、60分以上の昼寝を習慣にしてしまうと、以下のような悪影響が及ぶと言われています。
①Ⅱ型糖尿病リスクの上昇。
②メタボリスクの上昇。
③全死亡率の上昇など。

比較的長め(60分以上)の昼寝を習慣化するのは、身体にあまり良くないのかもしれませんね。

また、「多相睡眠」と一口に言っても、そのパターンは様々です。
たとえば、「60分睡眠+160分活動」を繰り返す睡眠パターンなども考えられますが、このような非現実的なものはやはり脳のパフォーマンスを急激に落としてしまうようです。
※参考:ヒトにおける多相睡眠パターンの悪影響:国立睡眠財団の睡眠タイミングと変動性コンセンサスパネルの報告-ScienceDirect

このように、多相睡眠による健康効果だけでなく、健康被害も多く報告されています。
なので、いきなり突飛な睡眠パターンに挑戦するのではなく、30分以下の短い昼寝習慣から取り入れてみるのがいいかもしれません。

目を閉じるだけでOK!

とはいえ、「昼寝する時間なんてないよ」という方も多いのではないでしょうか。
たしかに、学校や職場で横になって眠るというのはむずかしいかもしれませんね。
そんな方に朗報です。
じつは、目をつぶるだけで昼寝に近い効果が得られることが分かっています。
たとえば、ある研究では15分だけ目を閉じるだけで記憶が整理されることが分かりました。
※参考:安静時脳波は記憶統合と相関 – PubMed (nih.gov)

目から入ってくる情報量は非常に多いため、常に目を酷使していると、脳はその処理に追われて過剰に働きすぎてしまいます。
そこで、数分でもいいので、視覚情報をシャットアウトしてやると、脳が休息モードに切り替えられるようになるというわけですね。
ぜひお試しください。

まとめ

いかがだったでしょうか。
この記事では昼寝の効能について取り挙げました。
昼寝の効果はネガティブなデータからポジティブなデータまで出ています。
なので、一概に「この睡眠パターンが一番よい!」とは言えないのですが、日中にどうしてもパフォーマンスが上がらないという方は、まずは30分以内の昼寝をとるようにするとよいかもしれません。
時間がなければ、目をつぶるだけでもよいでしょう。
ぜひお試しください。

 

 

【参考文献】
安静時脳波は記憶統合と相関 – PubMed (nih.gov)
捕食ではなくエネルギー的制約が哺乳類の睡眠パターンの進化に影響を与える – カッペリーニ – 2008 – 機能生態学 – ワイリーオンラインライブラリ (wiley.com)
産業革命前社会における睡眠の細分化 |睡眠|オックスフォードアカデミック (oup.com)
欲求不満と衝動性を調整するための昼寝:パイロット研究-サイエンスダイレクト (sciencedirect.com)
特定の感情に対する人間の脳の感度を再調整する上でのレム睡眠の役割|大脳皮質|オックスフォードアカデミック (oup.com)
前向きコホート研究における昼寝とインシデント心血管イベントの関連 |心 (bmj.com)
昼寝と2型糖尿病のリスク:集団ベースの前向き研究-サイエンスダイレクト (sciencedirect.com)
昼間の昼寝と全死因および死因別死亡のリスク:英国の人口|の13年間のフォローアップ疫学のアメリカジャーナル |オックスフォードアカデミック (oup.com)
頻繁な昼寝と昼寝の練習がヒトの睡眠依存記憶に与える影響 |サイエンティフィックレポート (nature.com)
若年成人の昼寝の睡眠と行動の相関:スペイン、マドリッドの大学生1年生の調査:アメリカンカレッジヘルスジャーナル:Vol 57、No2 (tandfonline.com)
ヒトにおける多相睡眠パターンの悪影響:国立睡眠財団の睡眠タイミングと変動性コンセンサスパネルの報告-ScienceDirect
日中の昼寝時間と2型糖尿病またはメタボリックシンドロームとのJ曲線関係:用量反応メタアナリシス|サイエンティフィックレポート (nature.com)

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吉田 朋生