会社や学校、日々の家事から来るストレスに加え、核家族になったことや近所との関係が希薄している現代さみしさを感じる人は多くいるようです。

約7割が、1人暮らしか高齢夫婦のみになるという「2025年問題」が間近に迫る中、認知症の方や高齢者の心を落ち着かせるため、癒しを与えるために「アニマルセラピー」があります。そしてこのアニマルセラピーは高齢者だけではなく、受刑者の更生にも役立っているようです。

ではアニマルセラピーにはどのような効果があるのでしょうか。

アニマルセラピーとは

アニマルセラピーとはその名の通り、動物を通し精神安定と癒しを与えることを目的とした療法のことを指します。

最近になって知られてきた言葉ではありますが、アニマルセラピーは古代ローマ時代から馬をもちいて負傷した兵士のリハビリが行われていた歴史があり、1700年代にはイギリスの精神障がい者施設でウサギやにわとりを用いた治療法があったといわれます。日本では1970年代に乗馬療法を輸入したことから、アニマルセラピーが始まったようですが、現代では身近な動物である犬や猫、ウサギやモルモットなどのペットから、イルカなど大きな動物もアニマルセラピーに用いられています。

アメリカやイギリスなどの先進国では、治療行為として公的に認可されていて、ペットと暮らすことを勧める処方がされていたり、ドイツでも一般療法としてアニマルセラピーを取り入れているところが多くあるようです。

アニマルセラピーが私たちに及ぼす影響

ペットと触れ合うと脳内オキシトシンという物質がどんどん分泌されています。
このオキシトシンは「安らぎを与える癒しのホルモン」として知られており、自律神経を整えて脳の疲れを癒し、気分を安定させます。

東京農業大学農学部の太田光明教授は最近の研究結果から、人と犬が見つめあうと、人と犬の両方にこの幸せ物質のオキシトシンが増えることが分かったと述べています。

 

◆身体的効果
・オキシトシン、ドーパミン、セロトニンの効果
・血圧、心拍、コレストロール値の低下
・痛みの緩和
・リラックス効果
・ストレス緩和

◆精神的効果
・自尊心、自己肯定感の向上
・抑うつ状態の改善
・前向き思考

◆社会的効果
・人間関係の円滑化
・発言・会話の増加
・コミュニケーション能力の向上

※アニマルセラピーの理論と実際(岩本、福井、1996参照)

神奈川県にある聖マリアンナ医科大学は、2015年4月から大学病院では全国で初めて動物介在療法を導入しました。病気に立ち向かう子供たちのそばに寄り添うことで恐怖心を和らげたり、リハビリの手助けをしたりしているようです。

また、猫がごろごろとのどを鳴らす音は人の副交感神経を刺激する約20~50ヘルツの低周波音でストレスを軽減させ、幸福感を与えてくれるとも言われています。

認知症予防への取り組み

ある研究によると動物の触れ合いにより、うつ状態が改善され活動的になったことが認められています。
認知症高齢者に対して犬を用いたアニマルセラピーを実施した結果、実施していないグループと比べて精神的ストレスがあるときに上昇する唾液アミラーゼ活性値が下がっていることが分りました。

また動物に対して話しかけること、そして動物のしぐさに触れ合うことで笑顔が増えます。
笑顔が脳にいいことはすでによく知られていることですが、山形大学の2万人の検針データをもとにした研究によるとほとんど笑わない人は、よく笑う人にくらべて死亡率が2倍高く、脳卒中や心血管疾患の発症率も高いとされています。

アニマルセラピーを通し、笑顔が増え、その結果ドーパミン、セロトニン、オキシトシンなど心と体に良い脳内物質が分泌され、結果的に精神安定につながるのです。

さらに、動物を通して他者と会話が増えることは認知症の改善にもつながります。

会話量が増えることで、脳が活性化されます。相手の話を聞き伝えたいことを言葉にして表現するときに、大脳皮質前頭葉の下方にある「ブローカ野」が働きます。そして聞いた言葉を理解するためには大脳皮質側頭葉の上後方にある「ウェルニッケ野」という部分を働かせます。口や舌を動かすためには前頭葉の運動野、人の話を聞くためには側頭葉の聴覚野、また海馬や前頭前野など会話は頭をフル回転して行います。

年配になり家にこもりがちになったり、人といても会話をしない状況が多くなったりすると認知症が進むと言われています。

動物を通して他人とのやり取りが生まれ、コミュニケーションが拡大することで自発性の活動性の向上認知機能の向上も期待されています。

このようにアニマルセラピーは多くの分野で取り入れられ、そして脳と心に良い影響があることがわかります。もちろん、犬や猫などの動物が苦手という人には向かないセラピーですが、自分の家で動物を飼うことができなくても、最近はドッグカフェや猫カフェ、はりねずみカフェなど短時間動物たちと触れ合うことができる場所も増えてきました。

ストレスを感じて安らぎを得たいと思う時は、すこし動物と触れ合う時間を持ってみてはどうでしょうか。

【参考文献】
アニマルセラピーって呼ぶのは日本だけ!? 犬や猫、馬、イルカなど動物種ごとの事例を紹介!
安らぎホルモンが出る、動物と触れ合うペットセラピー
認知症のアニマルセラピー

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