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長く眠ればいいわけではない!?あなたに合った睡眠時間を知ろう

藤田 幸恵(ふじた ゆきえ)
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「あ~よく寝た!」

毎朝そんなふうに起きることができたら、とっても気持ちいいですよね。ところで、「よく寝た」とはどんな眠りのことを指すのでしょうか?

たっぷり寝ることがよい睡眠のようにも思えますが、どうやら長く寝ればそれでいいわけでもないようです。

そこで今回は、遺伝による影響を踏まえつつ、自分に合った睡眠時間について考えてみたいと思います!

<前回までの記事はこちら>
睡眠上手のすすめ その1:加齢とともに睡眠は変化する!年齢と眠りの不思議な関係
睡眠上手のすすめ その2:日中の過ごし方が夜の眠りを左右する!?質のよい睡眠につながる習慣とは

監修:花園大学社会福祉学部 小海宏之教授

必要な睡眠量は遺伝で決まる?

自分に合った睡眠時間を知るうえで重要になるのが、「からだが必要とする睡眠量」と「生活習慣による影響」のバランスです。

人間には、遺伝によって体質的に決められる「必要睡眠量」があると考えられています。必要睡眠量とは、体温調節や代謝など、生命活動を維持するうえで必要最低限の睡眠量のこと。ただし、大人になるほど生活環境の影響を受けやすくなり、実際にとる睡眠時間は左右されてしまいます

必要睡眠量を簡単に調べることができればいいのですが、そのためには食事や運動などの条件を整えたうえで毎晩脳波を測定するなど、特殊な環境を用意しなければなりません。となると、ちょっと現実的ではなさそうですね。
(参考:三島和夫『あなたの睡眠を改善する最新知識 朝型勤務がダメな理由』)

これまでの連載でお伝えしてきたように、睡眠時間は加齢による影響を強く受けます
(詳しくは、「加齢とともに睡眠は変化する!年齢と眠りの不思議な関係」にて解説しています。)

しかしその前に、体質的に必要な睡眠量が決まっているのです。つまり、睡眠にはそもそも個人差があるということ。まずはここをしっかりおさえておくことが、自分に合った睡眠時間を知る手がかりとなります。

あなたは朝型人間?それとも夜型人間?

少し話がそれますが、遺伝と睡眠の関係について掘り下げてみましょう。実は朝に強い「朝型」体質か、夜に強い「夜型」体質かについても、遺伝による影響を受けていると考えられています。

もちろん、がんばれば夜型体質の人が早く起きられるようになることはあります。ただ、朝型の人より努力が必要になるでしょう。

国立精神・神経医療研究センターのウェブサイト「睡眠医療プラットフォーム」では、「朝型夜型質問紙」を公開しています。これは、19の質問に答えることで、あなたが朝型か夜型か判定されるというもの。自分の体質を知るために、一度チェックしてみてはいかがでしょうか?

朝型夜型質問紙

本当に自分に合った睡眠時間を知るために

さて、睡眠時間に話を戻します。

さまざまな研究を通して、夜眠ることができる時間は加齢とともに減っていくことがわかっています。具体的には、10代前半までは8時間以上、25歳は約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間とのこと。つまり、健康な人であれば、20年ごとに30分ずつ減っていく計算になります。
(参考:厚生労働省健康局『健康づくりのための睡眠指針 2014』

ただし、これはあくまでもひとつの目安です。睡眠時間が長すぎると眠りが浅くなって夜中に目が覚めやすくなりますし、逆に短すぎると睡眠不足になり、日中に眠くなったり不調を招いたりしてしまいます。

では、自分に合った睡眠時間はどうすればわかるのでしょうか?

昼間の眠気は、睡眠が足りていないサイン

まずチェックしたいのが、昼間の眠気です。

日中に眠くなってしまうのは、十分に睡眠がとれていないサインかもしれません。眠くて作業に集中できないなど日常の活動に影響するときは、睡眠を見直す必要があるでしょう。

また、休日に朝遅くまで寝ないとからだがもたない人も、睡眠時間が足りていない可能性があります。なかなか難しいかもしれませんが、日ごろの睡眠不足を休日に補うのではなく、睡眠不足という負債がたまらないように睡眠時間を調整できるといいですね。

自分の睡眠を記録してみよう

なんとなく寝てなんとなく起き、なんだか不調…。これでは、何が原因か、どんな睡眠が自分に合っているのかわかりにくいですよね。

そこでおすすめしたいのが、睡眠の状況を記録することです。

記録するといっても、細かく書き留める必要はありません。ノートやメモ用紙でも構わないので、次のことを記録してみましょう。

  • 就寝時間と起床時間
  • 朝起きたときの気分(○、△、×などで簡単にメモ)
  • 昼間の強い眠気の有無

気分よく朝起きることができ、昼間に支障をきたすほどの眠気を感じない睡眠が理想です。

慣れてきたら、「運動状況」「入浴した時間」「夜中に目が覚めたかどうか」など項目を増やすのもおすすめ。あなたに合った睡眠のかたちが、さらにハッキリ見えてくるのではないでしょうか?

記録は面倒で続かない…そんな方は、スマートフォンのアプリを利用するのもひとつの手です。最近では、睡眠時間をカレンダーに記録したり、浅い眠りと深い眠りの周期を分析したりするアプリもそろっているので、上手に活用してみてくださいね。

まとめ

実は、年齢とともに睡眠時間は短くなっていくのに、寝床で過ごす時間は20~30代では7時間程度、75歳では7.5時間を超えたとの調査結果も報告されています。
(参考:厚生労働省健康局『健康づくりのための睡眠指針 2014』

「しっかり寝なければ」と、必要以上に長く布団に入っている方もおられるかもしれませんが、その習慣がかえって睡眠の質を低下させてしまうことも…。加齢にともなって必要な睡眠時間は減っていくこと、適切な睡眠時間には個人差があることを頭において、自分に合った睡眠時間を上手に見つけていきたいですね。

「あ~よく寝た!」が口グセになるように、まずはあなたのいつもの睡眠パターンをチェックしてみませんか?

【監修者プロフィール】
小海 宏之 教授
花園大学 社会福祉学部 臨床心理学科
公認心理師/臨床心理士/日本老年精神医学会認定上級専門心理士/精神保健福祉士
1986年関西大学社会学部卒業、2007年関西大学大学院社会学研究科博士課程前期課程修了、藍野病院臨床心理士、花園大学社会福祉学部准教授などを経て現職。

 

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編集者・ライター

藤田 幸恵(ふじた ゆきえ)

医学書の出版社で編集者として勤務後、フリーランスの編集者・ライターに。医師をはじめとする専門家の取材や監修のもと、医療・健康・美容に関する記事を多数執筆。からだやこころの不思議について考えること、専門書や論文を読むことがとても好きです。