認知症に向き合うみなさんへ 医師からのメッセージ
みなさん、こんにちは。あたまナビは脳に関する生活のヒントをお届けしています。
今回は『認知症と診断されたご本人』と『介護する方』への心と体の負担を減らす診療をされているドクターがあたまナビの皆さんのために執筆してくださいました。
徳島県もりの医院 東照代(ひがし てるよ)先生
医師。1998年愛媛大学医学部卒業
2004年から医療法人青志会に勤務。現在は副院長として介護、医療に携わり、四国徳島県において最先端の検査や治療がうけられるように地域医療に取り組む。プライベートでは3児の母。
もし『認知症です』と言われてしまったら
90歳も近いと、「年齢だから認知症になっても仕方ないよね」と思う方も多いのではないでしょうか?
しかし60代・70代ではそうもいきません。奥様が認知症であることを告げられたAさんは『死の宣告』と感じられたそうです。また、ある認知症の旦那様を介護中のBさんは、「こんなことになるなら癌(がん)と診断されたほうがよかった。」と。介護の現場では認知症と判断された場合、介護者に大きな負担となる場面も少なくありません。なぜなら、認知症と判断された脳の機能(もちろん個人差があります。)は3歳児と似たような状態となることがあるのです。今までの生活を送ることが困難になり、例えば清潔な形で排泄するということの理解ができなくなります。何をしてもミスをすることが多くなり、一緒に住んでいるご家族はその行動の後片づけに追われる毎日を過ごすことになってしまうなど、家族や生活にも大きな影響が出てしまうからです。とはいえ、悲観的になることはありません。心ある医師にかかり、介護サービスを上手に利用すれば笑顔の時間を増やすことが可能です!考え方一つで認知症介護は大きく変わります!
認知症と診断されたご本人はどんな気持ち?
いつもどおり家事や仕事をしているのになぜ怒られるのか、周囲のご家族がなぜ私の服を脱がそうとするのか(入浴や排せつケアのためでも)理解ができず、不安や怒りの感情がたまってしまいます。
お母様、お父様などご家族を熱心に介護される方が多いと感じる今日ですが、もの盗られ妄想から「盗った」「盗らない」で口喧嘩となったり、おむつを替えようとして思うようにいかずに思わず強く手や足を握って介護したら、あざが出来てしまったということもよくあります。認知症と判断されたからといって、必ずしもこのような状況になるとは限りません。とはいえ、介護とは本当に大変な場面が多いものです。この点で、介護を頑張っておられるご家族には、本当に頭が下がります。同時に、当法人の介護スタッフをはじめ、世の中の介護を担うご家族やスタッフに感謝とエールを送りたいです!
介護に悩んでいる方へ
介護が理由であざが増えてくる時、ご家族が涙を流してしまう時、イライラして怒ってしまう時は、デイサービス、ショートステイ、施設入居を考えたほうが、ご家族にとっても患者様にとっても笑顔の多い日常が過ごせるのではないでしょうか。ぜひ近くにある介護サービスを活用しながら無理をしすぎない介護を試みてください。
ご家族が、家族を手放す感じがして第三者に頼るのを躊躇されていることが少なくありませんが、介護サービスを利用する方が家族にもご本人にとっても良い場合もあります。それは介護スタッフは仕事なので入れ替わり受け持つことが可能で何をしても笑顔で受け入れやすいからです。認知症の患者様にとっては、笑顔の時間が増えることでストレスが減り、会話する回数が増え笑顔の多い生活が過ごせることに加え、認知機能低下を進行させにくい生活を送ることができます!
もりの医院が心がけている治療について
もりの医院では、投薬だけが治療ではないことを念頭におきながら保険薬のみならずサプリメントも組み合わせ診療しております。初診は60分、2回目以降も患者様により15~30分診察を取り入れてお話を聞きます。心に寄り添う診療を心がけています。薬の副作用が出ていないか?常に気にかけながら、御本人に病識がある場合は、今のお気持ちを聞きます。そのうえで、ご家族が認知症と判断された本人にどうあって欲しいか、どこまでの治療を望むかなど時間をかけて聞いてゆきます。
認知症の診療をするについては、何より、心の共有を大切にしています。
認知症の治療については、保険で可能な治療薬は大きく分けると2種類あり、それを使いわけます。しかし薬の副作用が目立つ場合は、減量や中止も考えます。ご希望にあわせサプリメントも使用し、治療を行います。外来ではご家族の介護の大変さを吐き出す時間が主になっていることも多いです。皆さんも、もしご家族で悩んでいることがありましたら自分の気持ちを吐き出すためにもお気軽に足を運んでください。
治療を頑張っている方へ
15年近く認知症患者さんと向き合い感じることは、抗認知症薬があわなければ無理に継続することはありません。いったん止めて新しい方法を考え直せばいいのです。投与量が多すぎるのに続けると体調を崩すことにもつながり負担となってしまうからです。抗認知症薬の他にもフェルラ酸を主成分とするサプリメント(日本認知症学会認定)や最近ではスペアミント由来のロスマリン酸という成分が濃縮されたサプリメントも利用することができます。ロスマリン酸はラットの研究で、脳内のアミロイドβの凝集を抑制する可能性が示されています。今後に注目したいと思います。
最後に
ぜひご家族が抱えすぎることなく、近くにある介護サービスを利用し、心ある認知症専門の医師を頼りましょう。大変なことも多いと思いますが、介護をされるご家族や患者様の笑顔が少しでも多くなるような毎日が送れることを目標に私たちと一緒に頑張りましょう!
徳島県 もりの医院 副院長 東 照代
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