なぜ人は推しに貢ぐのか？ 健康的な推し活ライフのために心がけたいこと
好きなアイドルやキャラクター、果ては店員に至るまで自分のお気に入り対象を「推し」と呼び、推しを愛でる活動こそが「推し活」です。なぜ人は「推し」に貢いでしまうのか？心理学から考えてみましょう。
・「推し活」とは
・好きなものには母性本能を抱く生き物
・「推し活」を楽しむアイディア
・「推し」とサヨナラする未来からも目を逸らさないで
「推し活」とは
近年、話題になっている「推し活」は、自分が好きな対象がより輝くよう、応援することです。この言葉が使われるようになる前は、アイドルグループの中でのお気に入りメンバーや、アニメのお気に入りキャラクター、という認識が通常でした。また、今では「推せる」という言葉もよく聞くようになっています。果ては、洋服やスイーツなど、無生物を「推す」人もいるようです。
これらの「推し活」に共通するのは、相手に対して見返りを求めていないということです。場合によっては、推しアイドルに覚えてもらいたいだとか、個人的に仲良くなりたいというような人もいるようですが、そのような感情が中心になっている場合は厳密には「推し活」とは呼べないでしょう。
相手が喜びそうなことをすることで幸福感を得て、相手が自分に何かしてくれるという見返りを求めないでいるのは、まるで母性本能のようです。この時、直接会ってお茶をすることのできない間柄である相手に対しては、いわゆる貢ぎ行為が好意を示すのに最も手軽であるため、「推し活」をする人たちは、「推し」に貢ぐ傾向があるといえるでしょう。
人間は、好きなものに母性本能を抱く生き物
人間は、好きなものに対して母性本能と同じ感覚を抱くのだという実験結果があります。
この実験は、アメリカのマサチューセッツ総合病院にて行われました。脳の内部の血流を計測して、どの部分が特に働いているのか調べることのできるMRIという機械を用いて観察すると、自分の子どもの写真を見た場合と、ペットの犬の写真を見た場合に、同じように心理的つながりを強く感じる脳部位が賦活したという結果を得たのだそうです。このことから、母性本能とは、親子、とくに母子間でのみ見られる特別な感情ではないことが推測されます。すなわち、人は、自分が愛している存在を見たり考えたりすると絆を感じる脳部位が存在し、それは、相手が人間でなかったとしても同じように働くということです。
そしてさらに興味深いことに、この脳部位は、ドーパミンの作用に大きく関わっていることが知られています。ドーパミンは、脳に快楽という報酬をもたらす脳内物質です。元は生物がより生存しやすいよう、行動学習を調整するために発達した部位です。すなわち、好きなものとより長い時間を過ごせば、生存に有利だと私たちの脳は知っているのです。だからこそ、「推し活」は人々の生活を支えているのだと言えます。
「推し活」を楽しむアイディア
推し活は、最近は流行ワードであるため、雑誌やテレビなどで特集が組まれることも少なくありません。その中では、「推し活」の具体的な方法として、花火を上げる、大型広告に出資するなどといった、目を見張るような規模の推し活が紹介されることがあります。それらと比べて、自分の「推し活」は方法がずれていて、「推し活」ではないのではないかと悩んでしまったり、他の人よりもお金をかけていなければ立派な「推し活」とは言えないのではないかと不安になったりすることがあるかもしれません。生活費を削ったり他の娯楽費を節約したりなど無理をして、心を削ってまで推し活をして、推しを好きな気持ちまでも枯渇させてしまっている人も、中にはいるのではないでしょうか。
本来、楽しいとか幸福だという気持ちを得るための活動で、嫌な気持ちになる必要はありません。支払った金額は、愛の大きさとは何も関係がないのです。
・「推し」とサヨナラする未来からも目を逸らさないで
一方で、寂しい話ではありますが、「推し」がいつまでもあなたの目の前にいてくれるという保証はありません。アニメやゲームであれば、作品が終わる、芸能人であれば、引退するいつかその現実にどこかのタイミングで直面させられることでしょう。その時に、「推し」の幸せを祈って、笑顔で見送ってあげられる関係こそが、程よい「推し活」のバランスだといえます。後から、思い出に浸りながら自分も微笑みを浮かべられるよう、感情をエスカレートさせすぎないで「推し」を見守ってあげることが、「推し」を愛する人びとに必要です。
参考： Mothers’ brains show similar responses to her baby and her dog Sue McGreeveyM
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