「初めてのはずなのに、どこかで見たような感覚がある」そんな経験をしたことがある人は多いでしょう。
それを表すのが、デジャヴという言葉です。
実はこのデジャヴは、若い人の7割程度が体験しています。
多くの人が一度は経験しているデジャヴは、どうして起こるのでしょうか。
この記事では、デジャヴとは何か、どんな理由で発生すると考えられているのか、いくつかの説を紹介します。
デジャヴはフランス語で「既に見ている」の意味を持つ言葉
初めて訪れた場所なのにどこか懐かしさを感じたり、見たことがある! と思ったりすることを、デジャヴ(Déjà-Vu)と呼びます。
フランス語で「既に見ている」という意味で、日本語では「既視感」と表されます。
昔から文学や映画などでよく取り扱われてきました。特に若い人に起こる現象で、心理学や脳科学の分野においてもさまざまな研究が行われています。
デジャヴは「私が過去に実際に体験した」という確信的な感覚を持つもの。そのため、夢や物忘れなどとは根本的に違い、ぼんやりとしていません。
デジャヴは脳が関連している? 超自然と記憶・脳研究
デジャヴについて、人は昔から研究を繰り返してきました。しかし残念ながら、いまだに解明されていません。
デジャヴとは何か、かつて考えられていたことや、現代の脳研究におけるデジャヴ発生原因の諸説をみていきましょう。
デジャヴと超自然・記憶
かつて、デジャヴは人間の能力を超えた超自然的な現象だと考えられていました。
前世の記憶がよみがえったとか、未来を予知する夢であるとか言われていたのです。
哲学者で数学者のピタゴラスは「その個人が前世に存在していたからだ」と主張していました。現世では初めてであるものの、前世で見た風景なので懐かしさを覚えるのだという意見です。
文学やエンターテイメントでは、超自然現象であるという見られ方が多くなっています。物語を盛り上げる要素の一つになっているのでしょう。
ただし、デジャヴ自体はさほど稀な現象ではありません。
京都大学大学院教育学研究科の楠見孝助教授による学生を使った調査では、場所に関するデジャヴは202人中63%、人に関するデジャヴは202人中35%で、どちらかの経験がある人は72%にもなりました。
そのため、デジャヴは通常の認知メカニズムであるという考えが広がっています。
デジャヴと脳
脳科学分野では、人間の機能の誤作動や時間差があることで生じる現象だと唱えています。
デジャヴが起こるのは、脳の両半球の認識機能に時間差が生じることが原因ではないかという説です。
人の手に利き手があるように、脳にも右脳と左脳で優位な方があり、どちらが優位かは人によって違います。そのため、何かを認識するときに左右で時間差が生じることがあり、その際にデジャヴが発生するのです。
また別の説では、情報の転送の遅れではないかと言われています。脳で情報の処理を行うときに非優位半球から優位半球へ情報が転送されるのですが、そのときに一時的に遅れが発生。デジャヴとなって現れるという説です。
簡単に言えば、脳がバグを起こしているのではないかということ。
しかしどの説も、まだ裏付ける根拠はありません。
静止画と動画を使ったデジャヴを引き起こす記憶実験
また、人が見て処理をする情報の量がデジャヴを引き起こすのではないかという説もあります。
2010年のデジャヴ体験誘発研究で、のっぺりとした絵よりも奥行がある絵を見たときの方が、デジャヴが引き起こされやすいと報告されました。
そこで日本の広島大学では、静止画とより情報量が多い動画を使った実験を行っています。
その結果、静止画を見たあとに動画を見たグループが最もデジャヴ体験を得たとわかりました。
情報量の少ない絵は、鮮明な記憶としては残りにくいもの。しかしそのあとで情報量の多い動画を見ると、過去に見た情報(静止画)を思い出します。しかし時間経過によって静止画の情報は忘却しており、本人は類似性には気付きません。そこで「初めて見たのに見たことがある」というデジャヴ体験をしたわけです。
このことから、一度見て忘れたものを、新しい情報が刺激して表面に出てきたのがデジャヴではないかと考えられます。
つまり、本人が忘れているだけで、テレビや本、イラストなどで一度は見ているのではないかと疑われるのです。
ちらりと一瞬見ただけという光景や物・人でも、人間は案外覚えています。脳が睡眠時に情報を整理するさいに、不要だからと「引き出しに仕舞った」状態なのかもしれません。
まとめ
初めての経験のはずなのに、一度体験したことがあると感じるのがデジャヴです。
超自然の力によるものや脳による情報伝達の時間差、情報転送の遅れなど、さまざまな説があります。
しかし、有力な説は脳がバグを起こしているというもの。デジャヴが若い人に多く高齢者に少ないのは、老化すると脳の中で発生した混乱は脳が無視するからだと説明されています。
現代では、人が故意にデジャヴ体験を誘発できます。そのため、そう遠くない未来には、デジャヴ発生の原因が解明されるかもしれません。
【参考URL】
https://study-z.net/100014371
https://psych.or.jp/interest/ff-14/
https://roadofneurosurgery.com/deja-vu-1/
https://psycho-psycho.com/deja_vu/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cogpsy/2016/0/2016_10/_pdf/-char/ja