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アルツハイマー型認知症の治療はなぜ難しいのか。期待される新薬

伊川ナナ
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認知症の中でも最もかかる方が多いアルツハイマー型認知症。脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症で、もの忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。高齢化が進む日本では年々罹患者が増えており社会問題となっていますが、未だ根本的な治療法がないのが実状です。

このページでは、認知症の治療がなぜ難しいのかをご説明したうえで、その困難の中で開発された期待の新薬についてご紹介します。

 

①高齢者の6人に1人が認知症…そんな時代だが治療法はいまだ確立されていない

内閣府の調査で、65歳以上の高齢者の認知症患者数は2012年時点で約462万人であり、7人に1人の割合でしたが、2020年では約600万人6人に1人が罹患していると推計されています。
さらに内閣府の推計では、2025年には認知症患者は約700万人、5人に1人になると見込まれているのです。この状況から、高齢者の健康・福祉を整えるためには、認知症の対策が必要不可欠であると考えられますが、その中でも最も多いアルツハイマー型認知症は根本治療できる方法が確立されていないのが現状です。

 

②アルツハイマー型認知症の治療はなぜ難しいのか

アルツハイマー型認知症を完全に治す治療法はまだ開発されていません。現時点では、できるだけ症状を軽くして、進行の速度を遅らせることが治療の目標になります。

〈日本で現在使われているアルツハイマー型認知症薬〉

●アセチルコリンエステラーゼ阻害薬…アルツハイマー型認知症の病態に、アセチルコリンが関与しているとするコリン仮説に基づく治療薬
ドネペジル(先発品名:アリセプト)、ガランタミン(先発品名:レミニール)、リバスチグミン(先発品名:イクセロン、リバスタッチ)
※アセチルコリン…神経伝達物質の一つ

●NMDA受容体拮抗薬…脳内のNMDA受容体が過剰に活性化されることで、神経細胞が障害されるとする仮説に基づく治療薬
メマンチン(先発品名:メマリー)
※NMDA受容体…記憶や学習に深く関与していると考えられている受容体

 

日本で現在使われているこれらの薬は、アルツハイマー型認知症を根本的に治すのではなく、症状を緩和するために用いられる薬となっています。
アルツハイマー型認知症の治療が難しい理由として、新しい薬の開発が難しいことが挙げられます。ヒトの脳機能が極めて高度で、マウスなどの動物モデルで再現することが困難であったり、ヒトの脳内の変化を直接観察したりすることができないためです。

 

③期待の認知症治療薬「アデュカヌマブ」とは

極めて開発が難しい認知症治療薬ですが、開発中止の危機を何度も乗り越え、米国で18年ぶりに新薬「アデュカヌマブ」が承認されました。
この薬は「アミロイドベータ(Aβ)仮説」に基づく発症の原因に作用する初めての薬で、根本治療薬となり得る可能性のある薬です。
アルツハイマー型認知症の原因であると考えられているアミロイドβに結び付き除去する効果が認められ、認知機能低下を抑えるデータも得られています。今までのアルツハイマー型認知症の薬は、症状を緩和することしかできませんでしたが、「アデュカヌマブ」は発症の原因に作用することで、病気の進行自体を抑えることが期待されているのです。

※アミロイドベータ(Aβ)仮説とは…アミロイドβという脳内で作られるタンパク質の一種が、うまく排出されずに脳内に蓄積することがアルツハイマー型認知症の原因となっているとする仮説。

 

しかし、今回の承認は、深刻な病気に対して効果が不確実であったとしても早期に使えるようにする「迅速承認制度」に基づく条件付きとなっています。今後、アルツハイマー型認知症の進行を抑える効果を改めて証明していく必要があるのです。日本でも承認の申請が行われましたが、2021年12月22日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の専門家部会は「現時点のデータでは、有効性を明確に判断することは困難」として承認を見送り、審議を継続するとしました。アデュカヌマブはアルツハイマー型認知症治療にとって希望の薬ですが、まだ効果が不確実なものとなっています。米国での使用状況など今後の報道にも注目していきたいところです。

 

④依然として早期対策が大切なので、あたまの健康に気をつけましょう

認知症の画期的な新薬という嬉しいニュースもありますが、いずれにしてもまずは発症しない、早期対策が大切です。

新薬でアミロイドβを除去することができれば、それ以上の神経変性を起こさなくなると考えられていますが、一度変性し消失した神経細胞は再生しません。進行した認知症では、失われた脳機能を回復することは難しいと考えられるのです。
認知症は糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病があると、発症しやすくなると言われています。
バランスの良い食事をとったり、定期的に運動したりするなど、生活習慣を整えることがまずは大切です。また、生活の中で役割や生きがいを持つことが、あたまの健康を維持することにつながります。一度ご自身の生活を見直してみましょう。

【参考】

相次ぐ”治験中止“…「認知症」の新たな治療薬の開発が難しい理由を聞いた(FNNプライムオンライン 2019/3/25)
認知症治療薬 期待と課題(読売新聞オンライン)
認知症(厚生労働省 みんなのメンタルヘルス)
高齢化の状況(内閣府)
アルツハイマー新薬「アデュカヌマブ」、承認見送り…「現時点で有効性判断は困難」(読売新聞オンライン

 

 

 

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