早食いは絶対NG!よく噛むことは、脳にも体にも良いことづくしだった!
食事をするとき、一口につき何回噛んでいるかを数えたことはありますか?忙しさのあまり、ほとんど噛まず飲み物で流し込むようにしながら早食いをするのが癖になっている人も多いのではないでしょうか。一説によると、現代人の噛む回数は弥生時代・卑弥呼が生きていた頃の6分の1、鎌倉時代の4分の1、さらに昭和10年代に比べると2分の1になっているのだとか。やわらかい食べ物は噛む回数が少ないので食べるのは楽ですが、実は「噛む」という行為は脳と体の健康を保つためにとても重要です。噛むことの意味と効果を正しく知って、早食いを卒業しましょう!
噛むことで脳内のさまざまな部分が活性化
何かを食べるとき、私たちは味や形、温度、味など、さまざまな情報を感じ取ります。また、砂つぶのようにごく細かいものでも、口に入るとすぐに気がつくもの。こうしたことが可能なのは、口のなかに高感度のセンサーが備わっているからです。そのなかでもとくに感度が高いといわれているのが、歯肉の下にある「歯根膜(しこんまく)」。歯を支えるクッションの役割を果たしており、ものを噛むとその刺激を脳に伝えます。
歯根膜は5つの脳神経とつながっており、そのなかには脳神経のなかでもっとも太い「三叉神経」も含まれています。そのため、よく噛むことによって脳のさまざまな部分に信号が伝わり、血液が脳に流れ込んで活性化するのです。近年の研究では、噛むことで脳内の「海馬」という部分のはたらきが活発になり、記憶力や空間認知能力がアップすることがわかってきたのだそう。また、運動能力や感覚、コミュニケーションや思考力なども向上するといわれています。ちなみに、義歯やインプラントでも効果があり、高齢者ほど噛むことによる脳への影響が大きいという実験結果もあるようです。
毎日の食事で認知症予防を目指そう
認知症には解明されていないことが多く、病気の種類や原因もさまざま。ただ、噛む能力が低下すると脳への刺激が少なくなり、発症リスクが高まるという説が有力視されているといいます。単に噛むことだけでなく、視覚や嗅覚、聴覚、触覚など。五感を大切にしながら食事を楽しむことも、脳を刺激するには大切なことなのだそう。
また、アルツハイマー型認知症患者の脳内に蓄積し、発症に深く関わると考えられている物質「アミロイドβ」は、咀嚼する回数が少ないほど多くなるのだとか。さらに、よく噛むことによって老化防止のはたらきがあるとされるホルモン「パロチン」が分泌されるそうです。
認知症を予防し、若々しい脳を保つためにも、よく噛んで食べることが有効なんですね。
長寿の秘訣は唾液?!たくさん分泌させることによるメリットとは
よく噛むと、唾液がたくさん分泌されることも大きなメリット。実は「唾液は長生きのもと」ともいわれているほど、唾液にはさまざまなはたらきがあるのです。
たとえば、細菌やウイルスの侵入を防ぎ、インフルエンザや肺炎などの病気を予防することもそのひとつ。また、口のなかをキレイに洗い流し、細菌の繁殖も抑えるため、むし歯や歯周病も起こりにくくなります。細菌が繁殖すると口臭の原因にもなるそうなので、できるだけ唾液を分泌させたいですよね。
また、驚いたことに唾液に含まれる「ペルオキシターゼ」という成分には、がんや老化の原因となる活性酸素を消すはたらきがあるのだそう。心筋梗塞や動脈硬化、糖尿病といった生活習慣病の予防にもつながるといわれています。
さらには、アレルギー性の病気の予防にも、唾液が深く関わっている可能性があるのだとか。そもそも私たちの体は、異物(抗原)が体内に侵入すると「抗体」という物質をつくりだして抵抗します。この抗体が何らかの理由で過剰に反応し、体に害を及ぼすのがアレルギー反応です。食べ物をよく噛んで唾液と混ぜると、消化・吸収が促されて異物に対する反応が抑えられるため、アレルギー反応が起こりにくくなるのだそうです。
さっそく実践!噛む回数を増やすコツ
噛むことの大切さはおわかりいただけたでしょうか?ここからは実践編!普段の食事で、噛む回数を増やすためのコツをご紹介します。
まずは食材選びから。いつもの献立に噛みごたえのある食材を取り入れてみましょう。筋繊維が多いタコやイカをはじめ、食物繊維の多いキャベツやニンジンといった野菜が代表選手。そのほか、キノコや乾物、こんにゃく、油揚げのように弾力のあるものもおすすめです。白菜やらっきょう漬け、たくあんといった、歯ごたえのあるお漬物を添えるのもいいでしょう。
次に調理方法。いつもと同じ食材でも、大きく切るようにするだけで噛む回数を増やすことができます。また、焼いたり炒めたりして、料理の水分を少なくするのも効果的。飲み込みにくいため、唾液を分泌させようと無意識によく噛むように。注意したいのは、食事中の水分摂取です。口のなかのものを飲み物で流し込むのではなく、よく噛んで唾液といっしょに飲み込んでから、飲み物を口にするようにしましょう。
そして、噛む回数を意識することも大切です。目標は一口あたり30回ですが、いきなり増やすのはハードルが高いので、まずはいつもより5回多く噛むように心がけてみてください。ゆっくりと食事を楽しむ時間の余裕を持つことも、有効かもしれません。
「よく噛むこと」は脳にも体にも良いことづくし!
よく噛むことは、脳にも体にもいいことばかり。しかも、すぐに実践することができる手軽な健康法です。まずは、今日の食事から噛む回数を増やすコツを取り入れてみてください。
この記事が役に立った・
ためになったと思った方は、
ありがとうボタンをクリック!
ありがとうと思った人の数47
フリーライター
牟田 悠(むた はるか)
立命館大学大学院文学部日本文学専修前期課程修了。フリーライターとして、関西圏を中心に活動中。
質のいい記事をよりスピーディーに書き上げられるよう、脳の働きや集中力に関する情報にアンテナを張っています。